大阪地方裁判所 平成10年(ワ)6921号 判決 1999年5月11日
原告
中園正幸
ほか一名
被告
株式会社商運社
ほか一名
主文
一 被告らは、原告中園正幸に対し、連帯して金八三六万一七一五円及びこれに対する平成一〇年一月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告中園和枝に対し、連帯して金八三六万一七一五円及びこれに対する平成一〇年一月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、これを五分し、その三を被告らの負担とし、その余を原告らの負担とする。
五 この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは、原告中園正幸に対し、連帯して金一三一五万五五五二円及びこれに対する平成一〇年一月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告中園和枝に対し、連帯して金一三一五万五五五二円及びこれに対する平成一〇年一月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、被告株式会社商運社(以下「被告会社」という。)の従業員である被告宮岡猛(以下「被告宮岡」という。)運転の普通貨物自動車が横断歩道を歩行中の中園貴恵(以下「貴恵」という。)に衝突し、同人を死亡させた事故につき、同人の両親である原告らが被告宮岡に対しては、自賠法三条に基づき、被告会社に対しては、民法七一五条に基づき、それぞれ損害賠償を請求した事案である。
一 争いのない事実等(証拠により比較的容易に認められる事実を含む)
1 事故の発生
左記交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
記
日時 平成一〇年一月一二日午後三時二三分頃
場所 大阪府守口市梶町三丁目四一番一四号先路上(以下「本件事故現場」という。)
事故車両 普通貨物自動車(大阪四四く六六八二)(以下「被告車両」という。)
右運転者 被告宮岡
歩行者 貴恵
態様 被告車両が、現場道路をバックで逆行し、横断歩道を歩行中の貴恵に衝突した。
2 貴恵の死亡
貴恵は、本件事故により頭蓋底骨折の傷害を負い、平成一〇年一月一二日午後四時五二分頃、死亡した。
3 被告らの責任原因
(一) 被告宮岡の責任原因
被告宮岡は、本件事故当時、被告車両を自己の運行の用に供していた者である。
(二) 被告会社の責任原因
被告宮岡は、被告車両を後退させるに際し、被告車両の後方が横断歩道であることを十分認識しながら、何ら後方の安全を確認せず、漫然と被告車両を後退させて被告車両を貴恵に衝突させた過失がある。
本件事故当時、被告宮岡は、被告会社の従業員であり、被告会社の業務の執行中であった。
4 相続
貴恵の死亡当時、原告中園正幸はその父であり、原告中園和枝はその母であった。
5 損害の填補
原告らは、本件交通事故に関し、被告らから四三七万二四六〇円、自賠責保険から二五四八万五八五〇円の支払を受けた。
二 争点
本件の争点は、損害額である(一部争いのないものも含む)。
1 原告らの主張
(一) 治療費 三七万七七一〇円
(二) 入院雑費 一三〇〇円
(三) 付添看護料 五五〇〇円
(四) 逸失利益 二八八九万二九八五円
基礎収入 平成八年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計女子労働者(一八から一九歳)の二一〇万八七〇〇円
生活費控除率 三割
新ホフマン係数 一九・五七四(死亡時九歳)
(五) 死亡慰謝料 二三〇〇万円
(六) 葬儀費用 一五〇万円
(七) 弁護士費用 二三九万一九一九円
2 被告らの主張
治療費は認め、その余は否認する。
入院雑費、付添看護料を要したとは考えられない。
逸失利益については、生活費控除率を五割とするべきである。そうすると、逸失利益は二〇六三万七八四六円である。
死亡慰謝料は一六〇〇万円程度が相当である。
葬儀費用は九〇万円程度が相当である。
第三争点に対する判断(一部争いのない事実を含む)
一 争点について
1 損害額(損害の填補分控除前)
(一) 治療費 三七万七七一〇円
治療費三七万七七一〇円については、当事者間に争いがない。
(二) 入院雑費 四〇〇円
本件事故の発生日時、貴恵の死亡日時に照らすと、四〇〇円の限度で入院雑費を要したと認められる。
(三) 付添看護料 二〇〇〇円
本件事故の発生日時、貴恵の死亡日時に照らすと、二〇〇〇円の限度で付添看護料を要したと認められる。
(四) 逸失利益 二二七〇万一六三一円
証拠(甲一、二)及び弁論の全趣旨によれば、貴恵(昭和六三年五月一一日生)は、本件事故当時九歳の女子であったことが認められる。貴恵は、本件事故に遭わなければ、一八歳から六七歳まで稼働することができたと認められるから、原告らの主張する平成八年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計女子労働者(一八から一九歳)の平均賃金である年額二一〇万八七〇〇円(右平均賃金が年額二一〇万八七〇〇円であることは当裁判所に顕著である。)を基礎とし、生活費控除率を四割五分として、新ホフマン式計算法により、年五分の割合による中間利息を控除して、右稼働期間内の逸失利益の現価を算出すると、二二七〇万一六三一円となる。
(計算式) 2,108,700×(1-0.45)×19.574=22,701,631(一円未満切捨て)
(五) 死亡慰謝料 二一〇〇万円
本件事故の態様、貴恵の年齢、貴恵と原告らとの関係、その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、貴恵の死亡に基づく慰謝料としては、原告ら固有の分も含め、合計二一〇〇万円とするのが相当である。
(六) 葬儀費用 一〇〇万円
葬儀費用については一〇〇万円の限度で本件事故と相当因果関係があるものと認められる。
2 損害額(損害の填補分控除後)
右損害額の合計は四五〇八万一七四一円となるところ、原告らは、本件事故に関し、合計二九八五万八三一〇円の支払を受けているから、これを右損害額から控除すると、残額は一五二二万三四三一円となる。原告らは、これを各二分の一の割合(各七六一万一七一五円)で取得したものと認められる(一円未満切捨て)。
3 弁護士費用 合計一五〇万円
本件事故の態様、本件の審理経過、認容額等に照らし、相手方に負担させるべき各原告の弁護士費用は七五万円をもって相当と認める。
4 まとめ
以上のとおりであるから、各原告の損害賠償請求権の元本金額は八三六万一七一五円となる。
二 結論
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 山口浩司)